【時には懺悔を ネタバレ】米本を殺した真犯人は誰?——9年前の新生児誘拐の真相・新の結末・4人の「懺悔」の意味と原作との違い

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映画『時には懺悔を』ネタバレ解説記事のアイキャッチ画像。夜の探偵の机に置かれた古いカセットレコーダーとヘッドフォン、『米本を殺した真犯人は誰?』のコピー

この記事は、犯人の正体・誘拐事件の真相・新の結末まで含む核心のネタバレを扱います。
まだ観ていない方は、先に本編をご覧になることをおすすめします。

結論から言うと、探偵・米本洋一を刺したのは米本の実の息子で、誘拐犯の明野哲夫ではありません。9年前に病院から連れ去られた新は明野に育てられ、明野の自首後は実母の尋津民恵が引き取り、11歳ごろに亡くなったことが聡子のナレーションで語られます。

「てっきり明野が犯人だと思っていた」。劇場を出たあと、私が最初に思ったのもそれでした。時間が細かく前後する編集で、誰の過去の話なのか見失った方も多いはずです(私も序盤で一度迷子になりました)。

この記事では、映画『時には懺悔を』の筋を一本の時系列に並べ直したうえで、犯人・誘拐の真相・結末を整理します。そのあと、タイトルの「懺悔」が誰の何の罪を指すのか、原作小説とどこが違うのかまで掘り下げます。

💡この記事でわかること
  • 米本洋一を殺した真犯人と、米本が最期に息子にしたこと
  • 9年前の新生児誘拐事件の真相と、新の実の両親
  • 時間が前後する映画を一本の時系列に並べ直した流れ
  • 新・明野・民恵・佐竹・聡子の結末
  • タイトルの「懺悔」が指す4人の罪と、原作小説との違い

この記事を書いた人
藤沢あかり——年間100本以上を劇場で観る映画ライター。打海文三の原作『時には懺悔を』(角川文庫)を読んでから映画を劇場で鑑賞し、原作と映画の違いを項目ごとに照らし合わせて書いています。

目次

米本を殺したのは誰?——真犯人は実の息子、明野ではなかった

米本洋一(佐藤二朗)を事務所で刺したのは、私立中学に通う米本の実の息子です。誘拐犯の明野哲夫(宮藤官九郎)も、依頼人の尋津民恵(黒木華)も、米本殺しには関わっていません。

「死んだほうがマシな人間」が殺された

物語は、一人の探偵の死から始まります。公式サイトのSTORYは、米本を周囲から「死んだほうがマシな人間」と呼ばれた男として紹介しています。評判は悪く、周りの人間はみな彼を嫌っていた。公式の人物紹介には、妻と有名私立中学に通う息子がいることも書かれています。

米本の遺体を見つけたのは、佐竹三雄(西島秀俊)の助手になる中野聡子(満島ひかり)です。米本の事務所に盗聴器を仕掛けに入ったところで、刺殺体に行き当たります。その後、大手探偵社のオーナー・寺西(役所広司)が、元部下の佐竹に米本殺しの調査を託します。

佐竹と聡子が疑ったのは「最後の依頼」の関係者

佐竹と聡子がまず追ったのは、米本が死の間際に抱えていた依頼でした。事務所に残されていたのは、テレビ番組を録画した映像。依頼の中身は、そこに映った子どもを探してほしいというものです。

依頼人は民恵、映像の子どもと暮らしていたのが明野でした。米本が二人の秘密に近づいていたとすれば、疑う理由は十分にあります。佐竹たちは明野の家に盗聴器を仕掛け、親子の暮らしを聞き続けることになります。観客の多くも、ここで明野を疑ったはずです。

刺された米本は、息子を庇って死んだ

真相が明かされるのは終盤です。米本を刺したのは息子でした。刺された米本は、返り血を浴びた息子に服を着替えさせ、凶器などに残った息子の指紋を拭き取ります。そうして息子を庇ったまま、息を引き取る——鑑賞した人の記録はこの点で一致しています。

一方で、息子がなぜ父を刺したのかは、映画ではほとんど説明されません。息子が父を憎んでいたことが伝わる程度です。鑑賞者のブログにも、その事情は語られないまま唐突に真相が明かされる、という受け止めがありました。

なぜ「犯人当て」で終わらないのか

ここが、この映画をミステリーとして観た人が戸惑うポイントだと思います。米本殺しは物語の入口であって、本筋ではありません。本筋は、米本が調べていた9年前の誘拐事件と、そこで連れ去られた少年・新のほうにあります。

それでも米本の最期には意味があります。周りから嫌われた探偵が、最後の瞬間だけは父親として息子を守った。中島哲也監督は、登場人物について次のように語っています。

この物語の登場人物たちはそれぞれ問題を抱えていて、欠点のない美しい人は出てきません。でもひとりの障がい児の存在によって少しだけ前を向いて生きていく決意をする。

出典: 【中島哲也監督インタビュー】障がい当事者の役者を起用した『時には懺悔を』で「嘘のないシーンになった」 – Pen Online, 2026-08-28

米本もまた「欠点だらけの親」の一人です。子どもとの関係に問題を抱えた親が次々に出てくるこの映画で、米本は息子に憎まれた父として、最初に退場していきます。

登場人物とキャスト——誰が誰の親で、誰の子なのか

この映画の主要人物は、ほぼ全員が「子どもとの関係」に問題を抱えた親です。役名と関係を先に頭に入れておくと、時間が前後する場面でも誰の話か見失いにくくなります。

役名キャスト立場子ども・家族
佐竹三雄西島秀俊一匹狼の独立探偵息子・正樹を数年前に亡くした。妻・由紀は入院中、娘・観月と同居
中野聡子満島ひかり探偵スクール生。佐竹の助手娘がいるが、会えていない
尋津民恵黒木華米本に匿名で調査を頼んだ主婦新の実母。再婚先に二人の義娘
明野哲夫宮藤官九郎新を一人で育てる父新の育ての親(血縁なし)。妻・昌美は故人
明野新しんすけ(8歳)/諸角優空(2歳)重い障がいのある少年実父は志賀功、実母は民恵
米本洋一佐藤二朗殺された探偵。佐竹の元同僚妻と、私立中学に通う息子
佐竹由紀柴咲コウ佐竹の妻息子の死後、精神科に入院中
寺西役所広司大手探偵社のオーナー佐竹の元上司
花村塚本晋也多摩中央署の刑事9年前の誘拐事件を所轄で担当
舟尾片岡鶴太郎調査に協力する探偵米本とは旧知の仲
志賀功毎熊克哉民恵の元夫新の実父

ほかに、明野昌美を烏森まど、佐竹観月を山﨑七海、佐竹正樹を山下舜太が演じています。佐竹の息子・正樹について、好書好日のインタビュー記事は「脳性麻痺を患う息子」と紹介していました。

作品情報

項目内容
公開日2026年8月28日
上映時間128分(映画.com表記)・映倫区分G
監督中島哲也(『来る』以来8年ぶりの監督作)
脚本中島哲也、門間宣裕
原作打海文三『時には懺悔を』(角川書店 1994年9月刊/角川文庫 2001年9月)
配給ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
構想公式サイトの表記は「構想18年」
初週末の成績3日間で観客動員8万1060人・興行収入1億1420万円(ダイヤモンド・オンライン)

公開までには曲折がありました。当初は2025年6月公開の予定でしたが、製作委員会が2025年4月28日に延期を発表しています。発表文では、中島監督の過去作品の報道に関わる意見を受け、問題をさらに詳しく調査・検証するためと説明されました。そして2026年8月28日に公開されています。

9年前の新生児誘拐事件の真相は?——明野夫妻が「拓」を「新」として育てた理由

9年前、子どもを授かれなかった明野哲夫が、病院から民恵の赤ん坊を連れ去りました。子どもを欲しがっていたのは、妻の昌美(烏森まど)です。生まれたときの名前は拓。夫妻はその子を「新」と名付けて育てます。

民恵は、連れ去る男を見ていた

公式STORYは、この事件を「9年前に起こった新生児誘拐事件」と書いています。鑑賞した人の記録によると、民恵は病院で母乳を絞るためにトイレへ行き、その間に赤ん坊が連れ去られます。戻った民恵は、子どもを連れて逃げる男を見ていました。それでも、追いかけはしなかった。

この沈黙が、民恵という人物の核です。公式STORYは彼女を「産んだ子を愛せなかった女」と表現しています。夫の志賀功(毎熊克哉)とはその後に離婚し、民恵は再婚しました。いまの家庭には二人の義娘がいます。

連れ去った子に、重い障がいがあった

明野が連れ去った赤ん坊には、重い障がいがありました。原作小説では、新の病気は二分脊椎症と水頭症と書かれています。映画を観た人の感想にも同じ病名が挙がっていました。公式サイトは新を「生きているのが奇跡」と言われた命として紹介しています。

夫妻がその事実を知ったのは、明野が赤ん坊を家に連れ帰ったあとでした。身代金を要求する連絡もありましたが、子どもが実の家に戻ることはありませんでした。妻の昌美が新を育てると決め、明野はそれに従います。昌美はその後に亡くなり、明野が一人で新を育ててきた。これが「現在」の明野親子の姿です。

なぜ民恵は9年後に探し始めたのか

民恵が動いたきっかけは、テレビに映った一人の子どもでした。この子が、手放した我が子ではないか。民恵は名前を伏せて、米本にその子を探してほしいと依頼します。

米本が死の間際に調べていたのは、まさにこの子どもでした。公式STORYの言葉を借りれば、「9年前に失踪し今は父親の明野と二人で暮らす、重い障がいのある少年・新」です。米本殺しと9年前の誘拐は、ここで一本につながります。

おたくライター

民恵が「連れ去る男を見ていた」と分かる病院の場面は、見落とさないでほしい。
私は初見でこの場面を回想の一コマとして流してしまい、民恵が9年後に名前を伏せて依頼した理由が最後までつかめませんでした。原作を読み返して、彼女が子どもを手放したことへの罪悪感を抱えたまま生きてきた人物だと腑に落ちたんです。

映画『時には懺悔を』の時系列タイムライン。9年前の新生児誘拐から、探偵・米本の刺殺、盗聴による調査、真犯人の判明、明野の自首と民恵による引き取り、後日談までの7つの出来事を上から順に図示

時系列で整理すると何が起きていた?——9年前の誘拐から新の最期まで

映画は時間軸を細かく前後させていますが、出来事を並べ直すと「9年前の誘拐→現在の米本殺し→後日談」の3層になります。下の表は、映画の出来事を時系列順に並べたものです。

時期出来事中心になる人物
9年前病院で民恵の赤ん坊(拓)が連れ去られる。民恵は連れ去る男を見ていたが追わない民恵・明野
9年前〜明野夫妻が障がいに気づく。昌美が育てると決め、「新」と名付ける明野・昌美
その後昌美が亡くなり、明野が一人で新を育てる明野・新
現在・発端テレビに映った子どもを探すよう、民恵が名前を伏せて米本に依頼する民恵・米本
現在米本が事務所で刺殺される。聡子が遺体を見つける米本・聡子
現在寺西が佐竹に調査を託す。佐竹と聡子が米本の最後の依頼を追う佐竹・聡子・寺西
現在明野の家に盗聴器を仕掛け、親子の暮らしを聞き続ける佐竹・聡子・舟尾
現在・真相9年前の誘拐の真相と、米本を刺したのが息子だったことが明らかになる全員
結末聡子が民恵を説得。明野は自首して服役し、民恵が新を引き取る聡子・民恵・明野
後日談新が11歳ごろに亡くなるまで民恵が育てたことが、聡子のナレーションで語られる民恵・新・聡子

なぜ筋が追いにくいのか

理由は大きく3つあると考えています。

1つ目は編集です。映画は葬儀の場面や遺体発見の場面を細かく刻み、時間を行き来しながら見せます。Yahoo!知恵袋にも、遺体のある部屋に入る場面と、葬儀で調査を頼まれる場面の順番が合わないのでは、という質問が出ていました。

2つ目は撮り方です。中島監督はPen Onlineのインタビューで「99%手持ちカメラで、俳優さんの顔のアップが多くなった」と語っています。人物の顔に寄った画が続くので、場所や時間の手がかりがつかみにくい。

3つ目は語り手です。この物語は、聡子が振り返る形で語られます。冒頭と結末に聡子のナレーションが入り、新のその後は映像ではなく言葉で伝えられます。

つまり、観客は聡子の記憶の順番で物語を受け取っている——そう考えると、時間が前後するのも腑に落ちます。

おたくライター

2回目を観るなら、「今の場面は9年前か、現在か、後日談か」だけを意識してみてください。
私は1回目、聡子が遺体を見つける場面と、葬儀で佐竹が調査を頼まれる場面の順番で混乱しました。3つの層に振り分けて見直したら、米本殺しの調査と誘拐の真相が同じ一本の線に乗っていると分かったんです。

新は最後どうなった?——民恵が引き取るまでと、聡子のナレーションが語る結末

明野の自首後、新は実母の民恵に引き取られます。新が11歳ごろに亡くなるまで民恵が育てたことが、聡子のナレーションで語られます。

聡子は、盗聴器越しに新を好きになった

明野の家に仕掛けた盗聴器から聞こえてくるのは、新が食べ、笑い、歌う日常でした。聡子はその音を聞くうちに、新に強く心を寄せていきます。調査の範囲を超えてのめり込んでしまう——公式の人物紹介も、聡子をそう書いています。

佐竹も、明野を自首させる前に新の行き先を決めなければならないと考えます。明野が捕まれば、新を育てる人がいなくなるからです。

民恵は一度、拒んだ

聡子が説得に向かった相手は、実母の民恵でした。鑑賞した人の記録によると、聡子は明野の妻が書き始め、明野が書き継いだ育児の日記を民恵に読ませます。

民恵は当初、引き取りを拒みます。再婚した家庭があり、義娘たちがいる。終盤、民恵が海で遠くから新を見つめ、涙を流す場面があります。民恵は最終的に、家族の反対を押し切って新を引き取りました。

明野は自首し、新の死は言葉で語られる

明野は自首し、服役します。新を手放す場面で、明野がほっとしたような様子を見せることに引っかかった人もいました。妻の死後、たった一人で新を育ててきた男にとって、手放すことは喪失であると同時に、解放でもあったのでしょう。

そして後日談。新は民恵に育てられ、11歳ごろに亡くなったことが聡子のナレーションで語られます。鑑賞者の記録では「11歳」「11歳くらい」「11歳ちょっと」と表現に幅があるため、正確な年齢はスクリーンで確かめてください。

佐竹の結末——病室のドアの向こう

佐竹自身の物語にも、小さな結末があります。終盤、佐竹は精神科に入院している妻・由紀(柴咲コウ)を見舞います。二人のやり取りは、病室のドアや窓越しの距離として描かれます。完全な和解ではありません。それでも、逃げ続けていた場所へ足を運んだこと自体が佐竹の一歩です。

この結末を美談として受け取るかどうかは、観た人で分かれます。民恵が新を引き取ったことを、収まりがよすぎると感じた鑑賞者もいました。シネマトゥデイの評は、この映画は誰も劇的には救わないと書いています。

罪は消えないし、失われたものも還らない。ただ、それぞれが少しだけ前を向く。結末の温度は、その「少し」に合わせて設計されていると感じました。

タイトルの「懺悔」とは誰の何の罪?——佐竹・聡子・明野・民恵、4人の懺悔を一人ずつ

懺悔は一人のものではありません。公式STORYは、新に出会う大人たちを「家族から目を背けた男、娘に捨てられた女、子を生きる糧にした男、産んだ子を愛せなかった女」と書いています。この4つの言い回しを人物に当てはめると、タイトルの意味が見えてきます。

公式STORYの言い回し人物抱えている罪・過去映画の中での「懺悔」
家族から目を背けた男佐竹三雄障がいのある息子・正樹のケアに向き合わず、妻を追い詰めた入院中の妻を見舞う
娘に捨てられた女中野聡子夫を刺した前科があり、娘の親権を失った新の行き先を探して民恵を説得する
子を生きる糧にした男明野哲夫9年前に赤ん坊を連れ去った誘拐犯自首して服役する
産んだ子を愛せなかった女尋津民恵連れ去られる我が子を見ても追わなかった新を引き取り、最期まで育てる

佐竹——向き合えなかった父

佐竹は、息子の正樹を数年前に亡くしています。正樹の世話を妻の由紀に任せきりにし、由紀は息子の死後に心を病んで入院しました。佐竹は酒に逃げ、同居する娘の観月ともうまくいっていません。

中島監督は、佐竹の設定についてこう説明しています。

障がいのある息子に向き合わなかった佐竹が、自分にはできなかったことをしている明野を見るという構成にして、影響を与えあう人間たちのみを描きたかった。

出典: 中島哲也監督 構想18年、諦められなかった映画『時には懺悔を』 – Little Bird, 2026-09-02

佐竹にとって明野は、鏡のような存在です。自分が向き合えなかった「障がいのある子との暮らし」を、明野は毎日続けている。盗聴器越しにそれを聞き続けることが、佐竹の懺悔の始まりだったのだと思います。

聡子——娘に会えない母

聡子は、夫を刺した前科で娘の親権を失っています。鑑賞者の記録では、夫の暴力が背景にあったと受け止められていました。娘とは会えていません。

聡子が新に強く心を寄せるのは、自分の娘に注げない思いの行き場でもあるのでしょう。民恵に「引き取ってほしい」と迫るのは、ある意味で自分ができなかったことを他人に求める行為です。監督はLittle Birdのインタビューで、聡子のお節介や頑張りが実はこの映画の人間たちを動かしていると語っています。

明野——罪の上に積み上げた9年

明野の罪ははっきりしています。他人の子を連れ去った誘拐犯です。それでも、妻の昌美を亡くしてからたった一人で新を育ててきた事実は消えません。公式の人物紹介には、明野が新の体や好みに誰よりも詳しいと書かれています。

明野の懺悔は自首です。ただし、自首は新との別れと同じ意味を持ちます。罪を償うことが、生きる糧を手放すことになる。この矛盾が、明野という人物の一番苦しいところです。

民恵——愛せなかったことへの答え

民恵の罪は、法で裁かれるものではありません。我が子が連れ去られるのを見て、追わなかった。その事実を抱えたまま、9年を生きてきました。

民恵の懺悔は、新を引き取って最期まで育てることでした。監督は、この映画が観客に向ける問いを次のように語っています。

親は産んだ子どもを必ず愛せるか。子どものケアをどこまでする責任が親にはあるのか。

出典: 中島哲也監督 構想18年、諦められなかった映画『時には懺悔を』 – Little Bird, 2026-09-02

5人目の親——米本

公式STORYの4人には入っていませんが、米本も子との関係に問題を抱えた親です。息子に憎まれ、その息子に刺され、最後に息子を庇って死ぬ。米本は懺悔の言葉を口にする前に退場しますが、その最期の行動が、彼なりの懺悔だったのかもしれません。

公式サイトのキャッチコピーは「生きていく。たとえ神様なんていなくても——」です。神に許しを乞う懺悔ではなく、許されないまま生き続ける覚悟。人の悪意を突き放して描いた『告白』と比べると、本作が人の罪をどう扱っているかの違いがよく分かります(詳しくは同じ中島哲也監督の『告白』のネタバレ解説で)。

おたくライター

聡子が何かを食べている場面と、佐竹が酒を飲んでいる場面を数えながら観ると、二人の「生き方」の差が見えてきます。
正直、初見では聡子の食べっぷりを演出過多だと感じていました。監督が「食べる」こともテーマだったと語っているのを読み、酒ばかり飲んで食べない佐竹との対比だと気づいてから、二人の場面の見え方が変わりました。

原作小説とどこが違う?——佐竹の家族・米本殺しの描き方・結末を比較

最大の違いは、障がいのある子を育てて亡くした家族が、原作では佐竹の友人夫婦、映画では佐竹自身の家族になっている点です。ほかにも、人物の整理や結末の語り方が変わっています。

項目映画原作小説
障がいのある子を育てて亡くした家族佐竹自身(息子・正樹)。妻・由紀は精神科に入院中佐竹の友人夫婦(木村栄治・由紀)
「由紀」という名前佐竹の妻の名前佐竹の友人(木村由紀)の名前
鈴木ウネ子(米本と組んでいたベテラン相談員)公式キャストに該当する人物がいない登場する
米本殺しの描き方刺された米本が息子の服を着替えさせ、指紋を拭いて庇う明野が訪ねた時には既に死んでおり、入口ですれ違った米本によく似た息子に捜査が向かう
連れ去られた時期公式STORYは「新生児誘拐事件」生後4か月の拓が、通院先の病院で連れ去られる
明野の刑自首して服役する結末時点では判決前。1年6か月ほどの実刑になる見込み
聡子のその後物語は聡子のナレーションで締めくくられる探偵事務所を開き、新たちに会いに行こうと佐竹に手紙を送る

佐竹を「当事者」にした理由

原作で障がいのある子を育てて亡くしたのは、佐竹の友人夫婦でした。映画はこの体験を、佐竹自身の家族に移しています。

面白いのは名前です。映画で佐竹の妻に付けられた「由紀」は、原作の友人の名前と同じなんです。原作を読んでから観た私は、ここで「友人の話を佐竹自身の話にしたのか」と腑に落ちました。

監督はLittle Birdのインタビューで、2時間ほどの尺で全てを表現するために整理が必要だったと語っています。原作のそれ以外の部分はけっこう大胆に削った、とも。米本と組んでいた鈴木ウネ子が映画のキャストにいないのも、その整理の一つと考えられます。

米本殺しは「見せる」場面になった

原作では、明野が米本を訪ねた時には米本は既に死んでいました。入口ですれ違った米本によく似た息子に捜査が向かう、という形で比較的短く処理されます。映画は、刺された米本が息子を庇う場面を正面から描きました。

映画.comのレビューにも、原作ではさらりと書かれていた場面を監督が見事に作り上げた、という原作既読者の感想がありました。佐藤二朗の芝居が、物語を米本殺しへ一気に引き戻す場面になっています。

原作は実話なのか

原作は実話ではなく、フィクションのミステリーです。ただし、公式サイトによると、打海文三は障がいのある息子を育てた経験をもとにこの小説を書きました。作品は話題になり、その後「アーバン・リサーチ」シリーズとして続編が4作発表されています。

原作を読むと、映画で削られた人物や、聡子から佐竹に手紙が届く結末まで追えます。新を引き取った民恵が、悪戦苦闘しながら新と向き合う姿も描かれます。

「時系列が分からない」「ハッピーエンドなの?」——X(旧Twitter)とYahoo!知恵袋の反応は?

X(旧Twitter)では宮藤官九郎の芝居を称える声と、感想を言葉にしにくいという声が目立ちました。Yahoo!知恵袋では、時系列や場面の意味、設定の現実味を尋ねる質問が多く見られます。

X(旧Twitter)での感想——宮藤官九郎への称賛と、言葉にしにくい重さ

Xでは、作品全体の受け止めを語る投稿が中心でした。

  • 障がいのある子の介護に正面から向き合った作品で、宮藤官九郎と佐藤二朗がよかったという声
  • 当事者でない自分が作品として評価してよいのか迷うと、評価の難しさを語る声
  • 誰も救われないわけではないが、ハッピーエンドとも言い切れないという声
  • 音の使い方と映像のブレがつらく、最初は筋が頭に入らなかったという指摘

私は、この「言葉にしにくい」という反応こそが本作らしさだと思います。結末の新の死は映像ではなく、聡子のナレーションで語られる。観客は余白を自分で埋めるしかありません。映像のブレについては、監督自身が手持ちカメラでの撮影を語っています。顔に寄った揺れる画は、人物の内側に観客を閉じ込める狙いだったのでしょう。

Yahoo!知恵袋で多かった疑問——時系列と設定の現実味

Yahoo!知恵袋では、特定の場面の意味や時系列を確かめる質問が目立ちました。

  • 遺体のある部屋に入る場面と、葬儀で調査を頼まれる場面の順番が合わないのではという質問
  • 明野の家の玄関の鍵が壊れていた場面と、その時の台詞の意味を尋ねる質問
  • 新の実の両親である志賀と民恵が、なぜ離婚したのかを尋ねる質問
  • 誘拐した子を9年間育てる設定や、9年後に実母が引き取る結末の現実味を問う質問

最後の質問では、1つ目の疑問がこう書かれていました。

誘拐した子どもを9年間育てることが、現実的に可能なのか?

出典: 映画時には懺悔を【重要・完全ネタバレあり】これから「時には懺… – Yahoo!知恵袋 – Yahoo!知恵袋の質問

知恵袋に質問が集まるのは、映画が説明を削っているからだと考えています。志賀と民恵の離婚の理由も、回答では映画内で語られないとされていました。設定の現実味への疑問は、9年という時間を画面ではなく人物の顔に刻ませる作りの裏返しでもあります。

時には懺悔をはどこで観られる?——配信は未開始、原作小説は電子書籍で読める

2026年10月3日時点で、本作の配信は始まっておらず、配信開始日も発表されていません。物語の元になった原作小説は、角川文庫版を電子書籍で読めます。

映画の配信状況

本作は2026年8月28日に公開された劇場作品です。Filmarksの配信情報ページは、配信サービスなしと表示しています。主要な動画配信サービスでも、配信開始の告知は確認できませんでした。Blu-ray・DVDの発売日も未発表です。

そのため、この記事では配信サービスの比較表を載せていません。上映中の劇場は、公式サイトのTHEATERページで確認するのが確実です。

原作小説を電子書籍で読む

映画を観たあとに原作を読む価値は、削られた部分を取り戻せることにあります。映画にいない鈴木ウネ子、佐竹の友人夫婦が語る障がい児を育てる日々、聡子が佐竹に送る結末の手紙。映画がナレーションで短く伝えた「その後」の手触りを、原作は書き込んでいます。

サービス特徴・おすすめポイント
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DMMブックス初回購入クーポンあり(内容は時期により変動)
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迷ったらBOOK☆WALKERから見るのがおすすめです。角川文庫を出しているKADOKAWAの直営ストアで、2026年10月3日時点の検索結果では本作が読み放題MAXコースの対象と表示されていました。読み放題の対象は変わることがあるので、購入前にストアの表示を確かめてください。

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紙の本で原作を手元に置きたい人や、映画のパンフレットを探している人には、中古・フリマが向いています。原作は2001年刊行の角川文庫なので、中古で探す選択肢もあります。映画のBlu-ray・DVDが出たあとは、そちらも探しやすくなるはずです。

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📥 保存版:主要人物の「罪」と最終的な運命 早見表

このままスクショしておくと、2回目の鑑賞や原作を読むときに迷いません。

人物(演者)立場抱えていた罪・過去結末(映画)
佐竹三雄(西島秀俊)独立探偵障がいのある息子・正樹のケアに向き合わず、妻を追い詰めた入院中の妻・由紀を見舞う
中野聡子(満島ひかり)佐竹の助手夫を刺した前科で娘の親権を失った民恵を説得し、物語をナレーションで語る
明野哲夫(宮藤官九郎)新の育ての父9年前の新生児誘拐の犯人自首して服役する
尋津民恵(黒木華)新の実母連れ去られる我が子を見ても追わなかった家族の反対を押し切って新を引き取る
明野新(しんすけ)重い障がいのある少年—民恵に育てられ、11歳ごろに亡くなったと語られる
米本洋一(佐藤二朗)殺された探偵周囲から嫌われ、息子に憎まれていた息子に刺され、息子を庇って死ぬ
米本の息子米本の実の息子・私立中学生父を刺した真犯人その後の処遇は映画では明示されない
佐竹由紀(柴咲コウ)佐竹の妻息子の死後、自責の念に苦しむ精神科に入院中のまま、佐竹の見舞いを受ける

よくある質問(FAQ)

時には懺悔をで米本を殺した犯人は誰?

米本を刺したのは、私立中学に通う米本の実の息子です。刺された米本は、返り血を浴びた息子に服を着替えさせ、指紋を拭き取って息子を庇ったまま息を引き取ります。犯行の詳しい事情は、映画ではほとんど説明されません。

明野は米本を殺していないの?

はい、明野は米本を殺していません。明野の罪は、9年前に病院から赤ん坊の拓を連れ去った誘拐です。佐竹と聡子は一時、米本の最後の依頼に関わる明野と民恵を疑いますが、真犯人は米本の息子でした。

新くんは最後どうなるの?亡くなるの?

明野の自首後、新は実母の民恵に引き取られ、11歳ごろに亡くなったことが聡子のナレーションで語られます。死の場面は映像では描かれず、言葉で伝えられます。年齢は鑑賞者の記録でも表現に幅があります。

「新」の読み方は?しん?あらた?

「しん」と読みます。生まれたときの名前は「拓」で、明野夫妻が「新」と名付けて育てました。実母の民恵は志賀功と離婚後に再婚しており、新の実父は志賀功です。

原作は実話なの?

いいえ、物語自体はフィクションのミステリー小説です。ただし原作者の打海文三は、障がいのある息子を育てた経験をもとにこの作品を書いたと公式サイトで紹介されています。原作は1994年に角川書店から刊行されました。

原作と映画で結末は違う?

大筋は同じですが、語り方と細部が違います。原作では明野の判決はまだ出ておらず、1年6か月ほどの実刑の見込みとされます。聡子は探偵事務所を開き、新たちに会いに行こうと佐竹に手紙を送ります。映画は聡子のナレーションで新のその後を語って締めくくります。

時には懺悔をは配信されている?いつ観られる?

2026年10月3日時点では配信されておらず、配信開始日も発表されていません。Blu-ray・DVDの発売日も未発表です。原作小説の角川文庫版は、Kindleなどの電子書籍ストアで読めます。

グロいシーンや観ていて苦しいシーンはある?

血が飛び散るようなグロテスクな場面が売りの映画ではありませんが、観ていて苦しくなる展開は多い作品です。監督のメッセージによれば、劇中には「この子は生まれてこないほうが幸せでした」というセリフもあります。親が子を愛せない現実も、そのまま描かれます。重いテーマだと覚悟して観ることをおすすめします。

まとめ

  • 米本を刺したのは実の息子。米本は息子を庇って死んだ
  • 9年前、明野哲夫が病院から民恵の赤ん坊・拓を連れ去り、妻の昌美と「新」と名付けて育てた
  • 明野は自首して服役し、新は民恵に引き取られ、11歳ごろに亡くなったと聡子のナレーションで語られる
  • 「懺悔」は、佐竹・聡子・明野・民恵の4人それぞれの罪を指している
  • 原作では、障がいのある子を亡くした家族は佐竹の友人夫婦だった

犯人当ての映画だと思って観ると、肩透かしを食うかもしれません。でも、9年前と現在と後日談を一本につなぎ直すと、この映画が描いていたのは「許されないまま生きていく人たち」だったと分かります。

映画で削られた人物や、聡子の手紙で終わる結末が気になった方は、ぜひ原作小説も手に取ってみてください。映画の余白が、静かに埋まっていくはずです。

参考文献・出典

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