フランケンシュタイン(2025)デル・トロ版|原作とどこが違う?エリザベスの死・ラストで怪物が船を押す意味・アカデミー賞3冠を解説

当ページのリンクには広告が含まれています。
映画『フランケンシュタイン』(2025)の解説記事のアイキャッチ画像。廃墟の実験塔と北極の氷に閉じ込められた帆船を配した背景に「フランケンシュタイン 2025」「原作とどこが違う?」のコピー

2025年の『フランケンシュタイン』は、ギレルモ・デル・トロが監督・脚本を務めたNetflixの独占配信映画です。2025年11月7日から配信されており、上映時間は149分、第98回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞の3部門を受賞しました。

『フランケンシュタイン』は何度も映像化されてきた題材なので、配信の検索窓に打ち込むと別作品が並んで混乱します。まずは「どれが2025年版か」をはっきりさせてから、原作との違い、あのラストの意味、そして賞レースの結果まで順に見ていきます。

この記事を書いた人
藤沢あかり——年間200本以上の映画を鑑賞。本作は2025年10月24日の日本先行劇場公開で1回、11月7日のNetflix配信開始後に自宅でもう1回観ている。メアリー・シェリーの原作小説も読了済みで、この記事を書くにあたって改変点を原作と1つずつ突き合わせて確認した。

この記事の後半は物語の結末に触れます。
「ラストで怪物が船を押したのはなぜ?」以降のセクションには、誰が死ぬのかを含む核心のネタバレがあります。未見の方は前半だけ読んで、鑑賞後に戻ってきてください。

💡この記事でわかること
  • 2025年版『フランケンシュタイン』の見分け方と基本データ(監督・配信先・上映時間)
  • 149分をどこで区切れるか、ホラーとしての怖さはどの程度か
  • 原作小説との違い——エリザベスの立場と死因が変わった意味
  • ラストで怪物が船を押す場面について、デル・トロ監督本人が語った答え
  • 第98回アカデミー賞の確定結果(何を獲って、何を獲れなかったのか)
目次

2025年の『フランケンシュタイン』はどれ?デル・トロ版の基本データ

ギレルモ・デル・トロが監督と脚本を1人で兼任したNetflix独占配信の映画で、2025年11月7日配信開始、149分、PG12です。

見分け方は「デル・トロ」「Netflix」「149分」の3点

『フランケンシュタイン』というタイトルの映画は山ほどあります。ユニバーサル映画が1931年に公開したジェイムズ・ホエール監督版(怪物役はボリス・カーロフ)から数えても、映像化は数え切れません。だから配信サービスで検索すると、まったく別の年代の作品がずらりと並ぶ。

2025年版を確実に特定したいなら、次の3点を見てください。

  • 監督がギレルモ・デル・トロであること
  • 配信がNetflixであること(劇場公開は配信前の限定公開のみ)
  • 上映時間が149分であること

ちなみに紛らわしいのが、本作で父レオポルド役を演じるチャールズ・ダンスが、2015年の別作品『ヴィクター・フランケンシュタイン』でもフランケンシュタインの父親役を演じている点。同じ俳優が同じポジションで2回出ているので、キャストだけで見分けようとすると足をすくわれます。

基本データ一覧

項目内容
原題Frankenstein
監督・脚本ギレルモ・デル・トロ
原作メアリー・シェリー『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』(1818年)
配給・配信Netflix
日本の劇場先行公開2025年10月24日(一部劇場)
Netflix配信開始2025年11月7日(全世界独占)
上映時間149分
映倫区分PG12
製作国アメリカ合衆国

上映時間について1つ補足を。日本の作品情報では149分と表記されていますが、英語版Wikipediaは英国の映像等級審査機構を出典に150分としています。1分の差なので実用上は気にしなくて大丈夫。ただ「149分と150分、どっちが正しいの?」と迷った人のために書いておきます。

なお本作は2025年8月30日に第82回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア上映されました。金獅子賞はノミネート止まりです。

149分は長い? 二部構成の切れ目で区切れる

長いです。ただ、この映画は分割して見やすい構造になっています。

物語は「パート1:ヴィクターの物語」と「パート2:怪物の物語」の二部構成。前半は創造主であるヴィクター・フランケンシュタイン男爵の視点で語られ、後半は同じ出来事を怪物の視点で語り直します。

だから、パート1が終わって視点が切り替わるところで一度止められる。むしろそこで区切ったほうが、後半の見え方が変わってきます。理由は後述します。

ホラーと聞いたけど、怖い? グロい?

映倫区分はPG12です。ゴシックホラーに分類されてはいますが、批評で語られているのは造形や美術の話が中心で、恐怖演出の強さを問題にする声はあまり見かけません。

実際、批評でも「ホラーというよりドラマ寄り」という指摘は複数出ています。死体から体を組み立てる工程は描かれるので血の表現はありますが、恐怖演出よりも人間関係の話に比重が置かれている、と考えておくといいと思います。

正直、筆者は暗い映画館でひとりで観るのが少し不安だったのですが、終わってみると怖さより悲しさのほうが強く残りました。

おたくライター

【結論】: 149分を通しで見ようとせず、パート1とパート2で2日に分けてください。
なぜなら、筆者は配信初日に一気見しようとして、塔が爆発してヴィクターが右脚を失うあたりで完全に集中が切れたからです。翌日に改めてパート2から見直したら、まったく別の映画のように入ってきました。この作品は「同じ出来事を2回、別の角度から見せる」構造なので、間に一度リセットを挟んだほうが後半の反転が効きます。

ネタバレなしのあらすじ——死を克服したかった男が作った「死ねない」存在

母の死に囚われた外科医ヴィクターが死者を蘇らせ、生まれた存在が死ねない体を持っていたことから、悲劇が動き出します。

物語は1857年の北極から始まります。北極点を目指していたデンマーク海軍の探検船ホリソント号が氷に閉じ込められる。そこで乗組員が発見するのが、重傷を負ったヴィクター・フランケンシュタイン男爵(オスカー・アイザック)でした。

彼を追ってきた「怪物」が船を襲い、ヴィクターは船長に語り始めます——自分がその創造主であること、そして何が起きたのかを。

そこから語られる過去は1855年前後。ヴィクターの母クレールは、弟ウィリアムを出産する最中に亡くなっています。母を失った悲しみと、抑圧的な父レオポルドへの反発。この2つがヴィクターを「死を克服する」という執念に駆り立てていきます。

やがてヴィクターは、死体の蘇生に関する研究を披露したことでエディンバラ王立外科医師会から追放されます。行き場を失った彼に手を差し伸べたのが、武器商人のハインリヒ・ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)でした。

無制限の資金と、実験のための廃墟の塔。舞台は整います。ただ、この出資には条件がついていた——ここから先が本編です。

登場人物とキャスト一覧——ミア・ゴスの「二役」が意味するもの

ヴィクター役はオスカー・アイザック、怪物役はジェイコブ・エロルディ。そしてミア・ゴスは、エリザベスとヴィクターの亡き母という二役を演じています。

役名俳優役どころ
ヴィクター・フランケンシュタイン男爵オスカー・アイザック主人公。死を克服しようとする外科医
怪物(クリーチャー)ジェイコブ・エロルディヴィクターが創造した存在。強大な力と急速な治癒能力を持つ
エリザベス・ハーランダーミア・ゴスハーランダーの姪。ウィリアムの婚約者
クレール・フランケンシュタイン男爵夫人ミア・ゴスヴィクターとウィリアムの母。物語開始前に死亡
ウィリアム・フランケンシュタインフェリックス・カマラーヴィクターの弟。エリザベスの婚約者
ハインリヒ・ハーランダークリストフ・ヴァルツ武器商人。ヴィクターの出資者
レオポルド・フランケンシュタイン男爵チャールズ・ダンスヴィクターとウィリアムの父。高名な医師
盲目の男デイビッド・ブラッドリー怪物に読み書きを教える老人
アンデルセン船長ラース・ミケルセンホリソント号の船長。語りの聞き手
若き日のヴィクタークリスチャン・コンヴェリー少年時代のヴィクター

※フェリックス・カマラーは映画.comでは「フェリックス・カメラー」と表記されています。

なぜミア・ゴスが二役なのか

ここ、けっこう大事なポイントです。

ミア・ゴスはエリザベス・ハーランダーと、ヴィクターの亡き母クレール・フランケンシュタイン男爵夫人を演じ分けています。同じ顔の女性が「失われた母」と「惹かれる相手」の両方をやっている。

つまり、ヴィクターがエリザベスに強く惹かれる構図には、最初から母への喪失が重ねられているわけです。彼が求めているのは恋愛感情だけではない——という読みが、キャスティングの時点で仕込まれている。

一度見終わってからこの配役に気づくと、序盤のヴィクターの態度がまったく違って見えてきます。

原作にいない人物——武器商人ハインリヒ・ハーランダー

クリストフ・ヴァルツが演じるハインリヒ・ハーランダーは、メアリー・シェリーの原作小説には登場しない、本作オリジナルの人物です。

設定は武器商人。しかも作中では、クリミア戦争で亡くなった兵士の遺体がヴィクターの材料になっていきます。「戦争で人を死なせる商売の男が、死をなくす実験に金を出す」という皮肉な構図が組み込まれているわけです。

このキャラクターの追加が、原作にはなかった「誰の金で、何のために作られたのか」という問いを物語に持ち込んでいます。

先ほど「この出資には条件がついていた」と書きました。その条件とは、自分の脳を怪物の体へ移植しろ、というものです。

ハーランダーは梅毒で死にかけていました。つまり彼が死を克服する実験に金を出した動機は、科学への好奇心でも慈善でもなく、自分自身の延命だったわけです。

ヴィクターはこの要求を拒みます。のちにハーランダーが実験を妨害しようとして転落死する展開も、この動機を知ってから見ると意味が変わってきます。

原作小説とデル・トロ版『フランケンシュタイン』の違いの対応図。エリザベスの立場が「ヴィクターの婚約者」から「弟ウィリアムの婚約者」へ、エリザベスの死が「怪物に殺される」から「ヴィクターの誤射」へ、ウィリアムが「幼い末弟」から「成人した弟」へ変更された3点を左右で比較

原作小説とどこが違う?エリザベスの「付け替え」が物語の意味を変えた

最大の違いはエリザベスの立場です。原作ではヴィクターの婚約者ですが、本作では弟ウィリアムの婚約者に変更されています。

ここを押さえておかないと、後半の展開の意味が半分も伝わりません。順番に見ていきます。

変更点①:エリザベスは「誰の婚約者」なのか

1818年に刊行された原作小説でのエリザベスは、ヴィクター自身の婚約者です。物語はヴィクターとエリザベスの結婚に向かって進み、その結婚式の夜に悲劇が起きます。

対してデル・トロ版のエリザベス・ハーランダーは、武器商人ハーランダーの姪であり、ヴィクターの弟ウィリアムの婚約者。ヴィクターは彼女に惹かれて言い寄りますが、断られる側です。

この一手で、ヴィクターの立ち位置が変わります。原作の彼は「愛する人を怪物に奪われる被害者」でしたが、本作の彼は「弟の婚約者に横恋慕する男」から出発する。同情しづらい人物として設計されているんですね。

変更点②:エリザベスを死なせたのは誰か

そして、ここが本作最大の改変だと筆者は思っています。

原作では、結婚式の夜にエリザベスを殺すのは怪物です。ヴィクターへの復讐として、怪物が彼女の命を奪う。

デル・トロ版は違います。怪物と対峙したヴィクターが発砲し、その弾が誤ってエリザベスに当たる。殺したのはヴィクター自身なんです。

罪の所在が、怪物からヴィクターへ移っている。この一点で作品の性質が変わります。原作が「創造物の恐怖」の物語だったのに対し、本作は「創造した側の罪」の物語になる。ラストの父子の和解が成立するのは、この改変があるからです。

変更点③:ウィリアムと、消えたジュスティーヌ

原作のウィリアムは、ヴィクターの幼い末弟です。怪物に殺され、その罪を着せられた使用人のジュスティーヌが冤罪で処刑される——原作でも屈指の重い挿話がここにあります。

本作にこのエピソードはありません。ウィリアムは成人した弟としてエリザベスの婚約者になり、結婚式の夜に怪物へ突進して致命傷を負います。そして死に際、ヴィクターを「怪物」と呼ぶ。

弟が兄に投げつけるこの一言が、本作のタイトルの意味を引き受けている。原作の冤罪処刑を切り落とした代わりに、別の刺し方をしてきたな、と感じた場面でした。

変更点④:拒絶される理由が「醜さ」ではなくなった

もう1つ、考察系の記事で指摘されている読みを紹介しておきます。

本作の怪物は、従来のイメージのような「縫い目だらけの醜い姿」ではありません。彫刻的な造形で、はっきり言って美しい。では何によって拒まれるのか。この点について、原作の「醜さ」による拒絶ではなく、知的能力の限界による拒絶へ置き換えられている、という読み方が示されています。

出典: ギレルモ・デル・トロ版『フランケンシュタイン』徹底考察 原作との相違 – note(考察記事)

これは公式見解ではなく1つの解釈です。ただ、実際にヴィクターは怪物に自分の名前しか教えられず、知的な成長のなさに苛立って態度を硬化させていきます。そう読める材料は作中にあります。

おたくライター

【結論】: 原作を「顔に縫い目のある緑色の怪物の話」だと思って観ると、人物関係で必ず混乱します。
なぜなら、筆者がまさにそれで、エリザベスがヴィクターの婚約者ではないと気づいた時点で「自分は何か見落としたのか」と巻き戻したからです。本作で作り替えられているのは怪物の造形よりも人物の配置のほう。原作を後から読んで、ようやく改変の意図が腑に落ちました。

ラストで怪物が船を押したのはなぜ?監督本人が語った答え【結末ネタバレ】

ここから先は結末のネタバレを含みます。
誰が死に、誰が生き残るかまで書きます。未見の方は鑑賞後に読んでください。

デル・トロ監督は船を「憎悪や憎しみ」の象徴だと語っており、それを押すことが怪物自身の解放を意味すると明言しています。

北極で何が起きるのか

物語は冒頭の北極に戻ります。怪物の話を聞き終えたヴィクターは、自分が何をしてきたのかを悟る。そして怪物への虐待を謝罪し、はじめて彼を「息子」と呼び、生きろと告げます。

怪物はヴィクターを赦し、「父」と呼びます。

ここで死ぬのはヴィクターです。北極での追跡で負った傷に力尽きる。一方の怪物は、そもそも死ぬことができない体を持っています。急速な治癒能力によって自死すらできない——それが彼の最大の絶望でした。だから最後に残るのは怪物のほうです。

そして怪物は、氷に閉じ込められた船を押して海へと送り出す。アンデルセン船長は追跡を諦め、乗組員に帰郷を告げます。去っていく船を見送りながら、怪物はかつてヴィクターに教えられたように、陽の光へ手を伸ばす。ここで映画は終わります。

監督の言葉——船は何の象徴か

この場面について、デル・トロは来日時のインタビューで自ら解説しています。

このシーン、船は憎悪や憎しみ、人生において盲目であるということの象徴で、それを押すことで自分自身を解放するという意味になっている。

出典: ギレルモ・デル・トロ、新作『フランケンシュタイン』を大いに語る! – ぴあ映画, 2025年10月24日

同じインタビューで監督は、それまでの怪物は「憎悪を与えられたら憎悪を返し、愛を受ければ愛を返すだけ」で自分の意志では動いていなかった、と説明しています。船を押す行為が、怪物が初めて自分の意志で選んだ行動だというわけです。

つまりあのラストは「怪物が赦してもらえてよかった」という話ではない。赦しを受け取った結果、憎悪から自由になれたという話なんですね。船という物理的な重量物を動かす画にしたのが、いかにもこの監督らしいと思います。

なぜ「自伝的な作品」なのか

デル・トロはこの映画を、自分自身の物語だとも語っています。

本当に大好き。私としては今まで手掛けてきた映画のすべてが、この『フランケンシュタイン』に到達するまでの学びだったと言ってもいいくらいだ。

出典: ギレルモ・デル・トロ、新作『フランケンシュタイン』を大いに語る! – ぴあ映画, 2025年10月24日

同記事で彼は、本作を「私と父、そして私と子どもたちの物語」だと述べています。父に理解されなかった子ども時代と、自分が親になってから子どもに指摘された経験。その2代にわたる関係を作品に込めた、と。

さらに監督は、原作者メアリー・シェリー自身が実父ウィリアム・ゴドウィンと不和だったことに触れ、ヴィクターが彼女の父で、彼女自身が怪物にあたるのではないかと解釈したことも明かしています。原作者の伝記的背景を、そのまま映画の構造に持ち込んでいるわけです。

おたくライター

【結論】: パート1で「ヴィクターに腹が立つ」と感じたら、それは正しい反応です。そのままパート2まで進んでください。
なぜなら、筆者はパート2で怪物が盲目の老人に読み書きを教わる場面から、まったく同じ出来事の見え方が反転したからです。前半で嫌悪していた相手に後半で感情移入させる——この二部構成そのものが、監督の言う「憎悪から愛への反転」を観客に体験させる仕掛けになっています。1回目でそこに気づけず、2回目でようやく分かりました。

アカデミー賞は何を獲った?技術3部門を制して監督賞に届かなかった理由

第98回アカデミー賞で9部門ノミネート・3部門受賞です。獲ったのは美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞で、監督賞にはノミネートすらされていません。

部門対象結果
美術賞タマラ・デヴェレル、シェーン・ヴィア受賞
衣装デザイン賞ケイト・ホーリー受賞
メイクアップ&ヘアスタイリング賞マイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クリオナ・ヒューレイ受賞
作品賞フランケンシュタインノミネート
助演男優賞ジェイコブ・エロルディノミネート
脚色賞ギレルモ・デル・トロノミネート
撮影賞ダン・ローストセンノミネート
音響賞グレッグ・チャップマンほかノミネート
作曲賞アレクサンドル・デスプラノミネート

見てのとおり、獲った3つはすべて「作品の見た目を作る」部門です。作品賞・脚色賞・助演男優賞という中核部門はノミネート止まり。監督賞は候補にも入りませんでした。

同じ傾向はBAFTAでも繰り返された

これ、アカデミー賞だけの現象ではありません。

第79回英国アカデミー賞でも、本作が受賞したのは衣装デザイン賞・プロダクションデザイン賞・メイクアップ&ヘア賞の3部門。まったく同じ構図です。第83回ゴールデングローブ賞に至っては、作品賞(ドラマ部門)を含む5部門にノミネートされながら受賞はゼロでした。

複数の賞レースで一貫して「視覚設計は最高評価、物語と演出は決め手に欠ける」という評価が下されたことになります。

批評家の評価はどうだったか

数字も見ておきましょう。ただし、これらのスコアはレビュー件数が増えると変動します。

2025年11月13日時点で、Rotten Tomatoesでは309件のレビューのうち86%が高評価でした。Metacriticでは57件の批評による加重平均が100点満点中78点で、「概ね好意的」という評価です。決して低くありません。

では何が引っかかったのか。批評で繰り返し指摘されているのが上映時間です。149分は長く、中盤に冗長さを感じるという声が複数出ています。

もう1つが怪物の造形をめぐる議論。彫刻的で美しい怪物は視覚的には圧倒的ですが、そのぶん原作の主題である「外見ゆえの拒絶」の説得力が弱まったのではないか、という批判があります。皮肉な話で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を獲った要素そのものが、物語面での弱点として指摘されているわけです。

技術3部門を制しながら監督賞に届かなかった構図は、この「見た目の完成度と物語の推進力のねじれ」を賞レースが正確に写し取った結果だと筆者は見ています。

『フランケンシュタイン』(2025)を見る・原作を読むには?

映像はNetflixの独占配信のみです。原作小説はパブリックドメインなので、複数の翻訳が電子書籍で読めます。

配信はNetflixだけ

本作はNetflixオリジナル映画で、ほかの主要な動画配信サービスでは視聴できません(2026年8月時点)。日本では2025年10月24日から一部劇場で先行公開されましたが、その上映はすでに終了しています。

サービス料金無料お試し期間配信状況
Netflix月額890円〜なし見放題(独占配信)

この作品は美術と衣装と特殊メイクで3つのオスカーを獲っています。塔の実験室の質感や、怪物の肌の作り込みは、スマホの小さい画面だとほぼ潰れてしまう。筆者は劇場と配信の両方で観ましたが、同じ場面でも画面が小さくなるぶん、質感の情報量ははっきり落ちました。

できればテレビかタブレットの大きめの画面で、部屋を暗くして観てほしい作品です。音楽はアレクサンドル・デスプラなので、音の環境も少し整えると変わります。

配信先が1つしかないので選ぶ余地はありませんが、無料お試し期間がない点だけ先に知っておいてください。Netflixは月額890円〜で、視聴した月だけ契約するという見方もできます。

原作小説を読むなら

原作はメアリー・シェリーが1818年に刊行した『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』です。すでに著作権が切れているため、日本語訳は複数の出版社から出ています。光文社古典新訳文庫、創元推理文庫、角川文庫など、訳者によって文体がかなり違う。

映画を観てから読むと、この記事で挙げた改変点が全部「あえてそうした」のだと分かって面白いです。特にエリザベスまわりは、原作を知っているかどうかで映画の印象が変わります。どれか1冊を「正しい原作」と決める必要はないので、試し読みで文体の合うものを選ぶのがいいと思います。

中古・フリマで探すなら

この記事を読んで原作が気になったなら、中古の文庫から入るのが手っ取り早いです。1818年刊行の古典なので訳書の流通量が多く、絶版になった訳が中古でだけ見つかることもあります。

映画の美術のほうに惹かれた人は、過去の映像化作品のソフトや関連グッズを探す手もあります。

サービス取扱商品特徴・おすすめ
メルカリフィギュア・グッズ・同人誌・中古コミックなど何でも個人出品で掘り出し物・限定品が見つかる
Yahoo!フリマ中古本・ゲーム・ホビー・DVD/Blu-ray全般PayPay連携・匿名配送。紹介コードで特典あり
ネットオフ中古コミック全巻・小説・DVD/Blu-ray・ゲームまとめ売り・宅配買取に強く、状態表記が明確
Amazon新品・中古の全巻セット・フィギュア・Blu-ray/DVD・グッズ新品も中古も。フィギュア・円盤・全巻セットが揃い、プライムなら翌日配送

📥 保存版:主要人物の結末と、原作ではどうだったか早見表

このままスクショして、鑑賞後の答え合わせに使ってください。

人物(演じた俳優)本作での立場本作での結末原作小説では
ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)主人公。死を克服しようとする外科医北極で負った傷により死亡。直前に怪物を「息子」と呼び謝罪する怪物を追い、北極で語り手の船に収容される
怪物(ジェイコブ・エロルディ)ヴィクターの被造物。死ぬことができない生存。ヴィクターを赦し、氷から船を解放して見送るヴィクターの死後、自らの最期を語って去る
エリザベス・ハーランダー(ミア・ゴス)ハーランダーの姪/ウィリアムの婚約者死亡。ヴィクターが怪物を狙って撃った弾が誤って命中ヴィクターの婚約者。結婚式の夜に怪物に殺される
ウィリアム・フランケンシュタイン(フェリックス・カマラー)ヴィクターの弟/エリザベスの婚約者死亡。怪物へ突進して致命傷。死に際にヴィクターを「怪物」と呼ぶヴィクターの幼い末弟。怪物に殺される
ハインリヒ・ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)武器商人。ヴィクターの出資者死亡。実験を妨害しようとして転落死原作に登場しない(本作オリジナル)
クレール・フランケンシュタイン(ミア・ゴス)ヴィクターとウィリアムの母物語開始前に死亡。ウィリアムの出産中に亡くなる
レオポルド・フランケンシュタイン(チャールズ・ダンス)ヴィクターとウィリアムの父。高名な医師作中で明確な死亡描写は確認できず
盲目の男(デイビッド・ブラッドリー)怪物に読み書きを教える老人死亡。オオカミに襲われ、怪物に看取られる

よくある質問(FAQ)

2025年の『フランケンシュタイン』はどこで見られますか?

Netflixのみです。Netflixオリジナル映画として2025年11月7日から全世界で独占配信されており、ほかの主要な動画配信サービスでは視聴できません(2026年8月時点)。日本では2025年10月24日から一部劇場で先行公開されていましたが、その上映は終了しています。

原作小説を読んでいなくても楽しめますか?

はい、予習なしで問題ありません。物語は原作を知らない前提で組み立てられており、途中で置いていかれることはないです。ただし本作は原作の人物配置を大きく作り替えているので、原作を読んでから観ると「どこを変えたのか」が分かって二度おいしい作りになっています。

ホラー映画と聞きましたが、グロいシーンは多いですか?

映倫区分はPG12で、突然驚かせるタイプのホラー演出はほとんどありません。死体から体を組み立てる工程が描かれるため血の表現はありますが、批評でも「ホラーというよりドラマ寄り」という指摘が複数出ています。怖さより悲しさが残るタイプの作品です。

アカデミー賞は作品賞を獲ったのですか?

いいえ、作品賞はノミネート止まりです。第98回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、受賞したのは美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞の3部門でした。監督賞にはノミネートもされていません。

怪物を演じているのは誰ですか?

ジェイコブ・エロルディです。本作で第98回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされました。当初はアンドリュー・ガーフィールドが検討されていましたが、2024年1月にエロルディへ交代しています。

149分をどこで区切って見ればいいですか?

「パート1:ヴィクターの物語」が終わり、語り手が怪物に切り替わるところです。本作は同じ出来事を創造主と被造物の両視点から語り直す二部構成なので、その切れ目で一度止めても物語が途切れません。むしろ間を空けたほうが後半の印象が変わります。

過去の『フランケンシュタイン』映画を見ていなくても大丈夫ですか?

まったく問題ありません。本作は過去の映像化作品の続きではなく、メアリー・シェリーの原作小説を独自に解釈した単独の作品です。1931年のボリス・カーロフ版などを知らなくても理解に支障はありません。

まとめ

2025年の『フランケンシュタイン』は、ギレルモ・デル・トロがNetflixで発表した149分の映画です。第98回アカデミー賞では9部門ノミネート・3部門受賞という結果を残しました。

この映画を語るうえで外せないのが、原作からの2つの改変です。エリザベスがヴィクターの婚約者から弟ウィリアムの婚約者になったこと。そして彼女を死なせたのが怪物ではなくヴィクター自身になったこと。

罪の所在が創造物から創造主へ移された結果、この物語は「怪物の恐怖」ではなく「父と子の赦し」の話になりました。ラストで怪物が船を押す場面が成立するのは、この設計変更があったからです。

視覚設計で3つのオスカーを獲りながら、監督賞には届かなかった。その評価のねじれも含めて、一度は自分の目で確かめる価値のある作品だと思います。

参考文献・出典

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次